第4章
ミラ視点
ルカが、まるでここが自分の家であるかのように階段を下りてくる。一歩一歩が計算され、意図的だ。廊下の照明が彼の顔の凹凸を捉え、警告のように左眉を分断する傷跡を照らし出す。
私は階段の途中で凍りついていた。手すりを握る指は、関節が白くなるほど力が入っている。動け、と自分に言い聞かせる。でも、体は言うことを聞かない。
階下の居間が静まり返る。
ルカは入り口で立ち止まる。彼の視線がマルコを冷たく射抜いた。「俺が戻ってこなければ、この家族は数週間で消滅していただろうな」
イザベラの顔から血の気が引く。彼女は身を縮こませた。「ルカ、ごめんなさい。どうかマルコには慈悲を」
ルカは短く、鋭く笑った。「心配するな。家族に手は出さん」彼は言葉を切る。「俺たちは皆、同じ血を分かち合っている」
暗色のスーツに身を包み、影がその顔立ちの上で揺らめく。彼がマルコを見つめるとき、その灰緑色の瞳に危険な光がちらついた。
マルコのウイスキーグラスが震え、中の液体が揺れる。彼は顎を食いしばるが、その下に隠された恐怖が見て取れた。
イザベラは半歩後ずさり、両手を固く握りしめる。
これが現実のはずがない。私を助けてくれたその男。私が……。彼がマルコのおじさん。ビンセントの弟だなんて。
ルカの声が低くなる。「だが、無能は正される必要がある」
マルコの顔が赤く染まる。「しゃあしゃあと戻ってきて、ここを乗っ取るつもりか？」
「乗っ取る？」ルカは首を傾げた。「お前がめちゃくちゃにした後始末をすると言っているんだ」
マルコの拳が固く握られる。全身がこわばった。
イザベラは口を開きかけ、また閉じる。その顔に恐怖が閃いた。
そのとき、ルカの視線が動いた。ゆっくりと。階段の方へ。
私の方へ。
彼の目が私を捉えた瞬間、その眼差しがほんのわずかに和らいだ。
顔に熱が広がる。心臓が肋骨を激しく打ちつけた。
彼は階段に向かって歩き出す。先ほどと同じ、ゆったりとした足取りで。「そして君は……」
背中が手すりにぶつかる。逃げ場はない。
彼は私の目の前で足を止めた。彼の目を見るには、顔を上げなければならないほどの近さだ。「どうした？ 俺の顔を忘れたか？」
喉がからからに乾く。間近で見ると、すべてがわかる。光を宿す彼の瞳。シャープな顎のライン。シダーと硝煙の微かな香り。
何か言いなさい。
ルカが手を伸ばし、私の横の手すりに片手をついた。彼が身を乗り出す。顔と顔が数センチの距離まで近づく。彼から伝わる体温を感じた。
階下では、マルコとイザベラが二人とも首を伸ばしてこちらを見ている。
「あなたが、ルカおじさん……！？」言葉が喉に詰まって出てきた。
彼の低い笑い声に背筋がぞくりとする。彼は手を伸ばし、私の顎を優しく掴んだ。「驚いたか」。その親指が、私の痣のできた頬に、触れるか触れないかで掠める。「もっと……親密な呼び方の方が好みだがな」
顔が爆発したように熱くなる。
身を引こうとするが、体が言うことを聞かない。
彼の親指が痣の縁をなぞる。その瞳に、何か暗いものが閃いた。
階下から、マルコが息を呑む音がした。
今、こうしてちゃんと見ると、わかる。似ている。イタリア人らしい顔立ち。がっしりとした骨格。でもルカは違う。もっと硬質だ。マルコが太陽と屈託のない笑顔なら、ルカは闇に潜む狩人だ。
そして、私は考えるより先に、一歩前に出た。体が本能的に動き、あの倉庫で感じた安全を求めていた。私は彼に、より一層身を寄せる。
ルカの目がきらりと光った。
私は彼の腕に自分の腕を絡め、彼の肩に頭を預ける。まるで千回もそうしてきたかのように。それが自然であるかのように。
彼の手が私の腰に回り、ぐっと引き寄せる。親密な体勢。叔父と、その甥の……私は一体何なのだろう？
「ただ、驚いただけです」私の声は小さかったけれど、しっかりとしていた。
ルカが私を見下ろす。あの倉庫での口調が戻っていた。彼の手が振るう暴力とは不釣り合いな、優しい口調。「いい子だ。少なくとも、誰が本当に自分を守ってくれるか、わかっているようだな」
「お前たち、二人が！？」マルコの声が裏返る。「一体どういうことだ！？」
グラスが指から滑り落ちる。大理石の床に当たり、砕け散った。破片が飛び散り、イザベラが悲鳴を上げた。
マルコは階段に向かって駆け寄り、私たちを睨みつける。その目は充血し、顔は歪んでいた。
ルカは身じろぎもしない。私の腰に回された腕はびくともしない。「お前に恩を売ってやったんだ。俺が間に合わなければ、こいつは集団で犯されて殺されていただろう」
「なんでお前が……」マルコは震える手で指を差す。「わけがわからない！」
私の中で何かが変わった。ルカの肩から顔を上げる。
マルコを見下ろす。
もう懇願するのはやめた。ドアのそばで待ち続けるのも。何日も無視されながら、彼の朝食を作るのも。
「私のことなんてどうなってもいいって、言わなかった？」
言葉ははっきりと、力強く出てきた。
マルコがたじろぐ。
私は彼の沈黙が続くままにした。「生き延びるために、私はすべきことをしたの」
そして、つま先で立ち上がる。
皆の前で、私はルカの頬に唇を押し付けた。柔らかく、意図的に。
ルカの口元が歪む。その瞳に勝利の光が宿った。
マルコは、毎朝自分のために朝食を作ってくれた少女が、他の男にキスするのを見ていた。自分の叔父に。ドアのそばで待っていた少女。彼のどんな言葉にも微笑んでいた少女。いつまでもそこにいると思っていた少女。
彼女はもう、あの少女ではない。
イザベラは口を手で覆う。その目は驚きに見開かれていた。
「やめろ！」マルコの怒号が家中に響き渡る。「そんなこと許されるか！」
彼は階段を駆け上がってくる。
ルカの目が細められる。ほんのわずかな仕草。
影から黒服の男が二人、姿を現した。彼らはマルコが三段も登らないうちに捕まえる。マルコは暴れるが、その腕力は鉄のようだ。
「彼女は俺のものだ！」マルコの声が途切れる。「俺たちは一緒に育ったんだ！十五年も前から知ってるんだぞ！」
ルカの声が冷たくなる。「彼女は一度もお前のものになったことはない。お前がゴミのように捨てたんだ」
彼は部下たちに向き直る。「東棟へ連れて行け。扉をロックしろ」
「ミラ！」マルコは引きずられながらも抵抗する。「俺にこんなことするな！愛してるんだ！ずっとお前を愛してた！」
私の体はこわばった。何年も待ち続けた言葉。
でも、私は振り返らない。返事もしない。
ただ、ルカの袖を強く握りしめるだけ。
目は熱いが、涙は一滴も落ちない。
愛してる？今になって愛してるって？十五年間も無関心だったくせに？昨夜、私を奴らに渡せと言ったくせに？
遅すぎる、マルコ。遅すぎるんだよ。
「マルコ！私の息子！」イザベラが彼らの後を追い、その泣き声が廊下に響き渡る。
物音は遠ざかり、居間は空っぽになった。静寂が訪れる。
階段には、ルカと私だけ。
彼は私の腰から手を離し、代わりに手を取る。ベランダに向かって歩き始めた。
私はふらつく足で後についていく。
外には、ニューヨークの街が広がっていた。至る所に灯り。はるか下を流れる車の流れ。
ルカがシガーとライターを取り出す。炎が彼の横顔を照らし出した。
足の力が抜ける。マルコの顔。彼の叫び声。ルカが俺を抱きしめた感触。皆の前で彼にしたキス。あらゆるものが頭の中を駆け巡る。
私は何をしてしまったんだろう？
いや違う。私は、ようやく正しいことをしたんだ。
冷たい風が都会の音を運びながらベランダを吹き抜ける。ルカは手すりに寄りかかり、ゆっくりとシガーに火をつけた。煙が夜の闇に渦を巻いて消えていく。
私は彼の数フィート後ろに立つ。腕を自分に回して。
どちらも口を開かない。
ただ、タバコが燃えるかすかな音。遠くのサイレン。一秒一秒が、審判を待つ時間のようだ。
「あなたが誰なのか、教えてくれなかった」私の声は小さく出た。「どうして？」
ルカは煙を吐き出す。こちらを見るために首を向けた。
その灰緑色の瞳が窓からの光を捉える。闇の中の狼の目のようだ。
私は無意識に半歩後ずさった。
彼の声が、あの低く、人を惹きつける響きに戻る。危険で、親密な。「怒っているのか？」
