第7章
友梨奈のもとを去ってからというもの、孝平は常軌を逸していた。
彼は東京中の全テレビ局の広告枠を買い占め、昼夜を問わず同じメッセージをテロップで流し続けた。
『里奈、帰ってこい。俺は待っている』
その言葉の下には森田家の家紋、そして五百万円という莫大な懸賞金。たった一つの有効な手掛かりに対して支払われる額だ。
丸二十八日間、彼は屋敷の書斎に籠もりきりだった。手元には常に電話を置いていたが、その画面が明るくなることはない。部下が運び込む書類は未決裁の山となり、目を通そうともしなかった。港湾事業でトラブルが発生し、チュニジアで貨物船が三隻拿捕されたという報告にさえ、彼はただ手を振っ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
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