第213章 貧民窟での蜜月の夜

上村サラ POV

暗い路地裏で春と落ち合った瞬間、張り詰めていた糸が切れたように、私の心から恐怖と不安が霧散していった。

場所がどこであろうと、たとえそこが戦火の真っ只中であったとしても、春がそばにいてくれさえすれば、そこは私にとって絶対的な安全地帯になる。

私たちは互いの体温を確かめるように抱き合い、そして体を離した。春が私の頬を優しく撫でる。

「ホテルの状況は?」

私は頷き、努めて冷静に答えた。

「機動隊は到着したけれど、数が少なすぎて話にならないわ。暴徒の侵入を防ぐのは無理ね」

「怖かったか?」

私は首を横に振る。

「あなたの奥様よ? これくらいの修羅場、どうってこと...

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