第10章

南條修司は足早に現場に向かい、黒い瞳で辺りを見渡したが、あの姿は見当たらなかった。

山本信也は彼を見るなり、急いで出迎えた。

「修司様、お越しになられましたか。そろそろ始めましょうか?」

南條修司は椅子に座り、木村智也は察して言った。

「始めましょう。社長はお忙しいですから」

木下明美は南條修司の姿を見るや、色っぽく寄ってきて、彼の腕に抱きついた。

「ダーリン、来てくれたのね。すっごく会いたかったわ」

南條修司は冷ややかに目を上げただけで、木下明美は慌てて手を引っ込めた。

プライベートでは大胆な行動は控えめだが、公の場では南條修司も一定の体面は保っていた。

「明美さん、始め...

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