第26章

南條修司は目を細め、白石沙耶を見返した。

なるほど、賢い手だ。火の粉を自分に向けさせるとは。

跪かせでもしたら、身分も立場も違いすぎる弱者いじめになってしまう。そうなれば南條修司の面目は丸つぶれだ。

男の瞳に興味の色が浮かんだ。

賢い者は賢い者との駆け引きを好むものだ。攻防のやり取りこそが面白い。

南條修司は久しぶりに、自分の前でこれほど知恵を働かせる女に出会った。実に興味深い。

そこで彼は手を振り、相変わらず黙ったままだ。

周囲の者たちは社長のこの手振りの意味を推し量っていた。許すのか?それとも言い訳は聞かないから、やはり跪けということか?

「修司様、彼女の言うことなんて—...

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