第38章

その時、原田勇の電話が震え始めた。木下明美からだった。

「うまくいった?」木下明美は声を潜めて尋ねた。

「まあ...もうすぐだ」原田勇はあいまいに答えた。

「もうすぐってどういうこと?一人の子供すら何とかできないの?私と駆け落ちする気がないってこと?」木下明美が問いただした。

「もちろんあるさ」

「だったら私のためにきちんとやりなさいよ!こんな簡単なことすらできないなら、どうやって私に安心感を与えられるの?そんなあなたとどうして駆け落ちできるっていうの?」

「わかったよ」

電話を切った原田勇の目が再び冷たくなった。達也を憎々しげに見つめた。

そしてその瞬間、彼はようやく思い出...

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