第57章

女子は艶やか、男子は凛々しい。

美作アレンの中性的な美しさは、若旦那を演じるのに存分に活かされていた。

幼少期から恵まれた家庭環境で育った彼は、生来の貴公子のような慵懶さと奔放さを身にまとっている。

ただそこに立っているだけで、名家の御曹司そのもの。過剰な演技など必要としなかった。

初めての撮影で一発OK、これ以上ない順調さだった。

少し離れた場所で、木下明美は歯ぎしりしながらそれを見ていた。

「あの針、本当にあの女の服に隠したの?なんで平気なの?」木下明美は浅野洋子に小声で尋ねた。

「明美さん、絶対に仕掛けましたよ。撮影中に何度も腰に手をやるの、見なかったですか?針はそこに隠...

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