第108章 独り者大将

契約書には明記されていた。偽装結婚であることは、双方とも外に漏らしてはならない。高橋裕也も、安藤花子も――例外なく守る義務がある。

今さら彼が説明したところで、はっきりとは言えない。せめて、安藤美咲にだけは信じてほしい――ただ、それだけだった。

安藤美咲は顔を背けるようにして、ちらりと彼を見る。

「あなたのおじいさん、安藤花子のことが相当お気に入りなんでしょう?」

前にも聞いた。結婚を決めたのは祖父で、祖父が「娶れ」と言ったのだと。

高橋裕也は「……ん」と短く返す。彼自身も腑に落ちていない。両家に、これといった付き合いがあるようにも見えないのに。

昔、年寄り同士が知り合いだった―...

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