第63章 彼女にやられた

安藤美咲はその言葉を聞いて目を開き、針が――確かに彼の手の甲に刺さっているのを見た。

 ぞっとして、反射的に手を離す。さっきまで刺していたのは猫の尻のはずだ。どうして、彼の手に……?

 どうしよう。

 十四郎は針を抜き取り、低く問いかけた。

「おまえ、何を打った?」

 美咲はぱっと青ざめ、唇が震える。声は蚊の鳴くように小さくなった。

「……催情剤」

 言い終えるや否や、十四郎の顔色がすっと白くなり、瞳の奥に驚きが走った。

「は? 動物用だって言うのか?」

 そんなの、聞いたことがない。普通なら解毒剤でも飲めば済む話だ。だが動物用となると、何を飲めばいい?

 考える間もなく...

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