第74章 彼女の幸運が訪れた

安藤美咲は彼を玄関まで見送らなかった。キッチンのダイニングテーブルに腰を下ろし、しばらくぼんやりする。

――たとえ採用の口を利いてくれたとしても、あれは私を監視するためだ。

そう思うと、胸のつかえがすっと消えた。高橋式みたいな大企業なら、たとえ末端の事務でも、外の管理職より給料がいいはずだ。

待遇がいい、と前に誰かが言っていた。昼は社員食堂でビュッフェ形式、デザートにフルーツ、アイスまで付くらしい。

安藤美咲は立ち上がって部屋へ戻り、シャワーを浴びた。昨日は彼の世話で汗だくになったからだ。

湯上がりの身体は軽い。少しきちんとした服に着替え、薄く化粧もした。最低限の礼儀として、そこは...

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