第86章 お見合い

安藤美咲は高橋裕也の言葉を聞きながら、どこか彼が乗り気ではないように感じた。

彼女は何も言わない。これは彼の私事だ。自分は秘書で、口を挟める立場じゃない。

高橋裕也は、今の彼女が妙におとなしく見えた。けれど、その沈黙は――以前、彼女に「彼女になれ」と言って断られたときの沈黙にも似ている。

この女は、俺の気持ちがまるでわかっていない。

そう思うと、少し厄介で、少しだけ胸がざわついた。

車は一品居の駐車場に滑り込み、運転手がドアを開ける。

二人で降りると、高橋裕也が先に立ち、美咲はその少し後ろをついていった。

個室に通される。広くはない。二人で食事をするにはちょうどいい広さだ。

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