第7章

由梨の視点

 もう二度と、安心なんてできないと思っていた。

 けれどナポリで、弘哲の庇護のもと、私はようやく息をすることを思い出したのだ。

 数ヶ月後。

 ブラインドの隙間から射し込む陽光が、孤児院の木の床に柔らかな縞模様を描いている。私は少年の擦りむいた膝に包帯を巻き終え、優しく声をかけた。

「はい、終わり。次はそんなに急いで走っちゃだめよ」

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 少年は弾むような足取りで駆け去っていく。

 この数ヶ月、弘哲は平塚家の領地にある孤児院の近くに私を住まわせてくれている。私は毎日ここへ通い、子供たちの基礎的な手当──擦り傷や風邪、発熱といった軽い...

ログインして続きを読む