第8章

 由梨の視点

 背後から、低く重みのある声が響いた。

 俊が弾かれたように顔を上げる。その顔色は、瞬く間に紙のように白く染まった。

 そこには、傷一つない弘哲が立っていた。その背後には、完全武装した平塚家の手勢が控えている。

 私は彼の手元に視線を走らせる。十本の指が、すべて揃っている。安堵のあまり、視界が一気に熱くなった。

 弘哲は私に片目を瞑ってみせ、唇の端を上げて安心させるような笑みを浮かべた。

「お前……な、なぜだ……ありえない……」

 俊は信じられないという表情で弘哲を見つめ、次いで拘束されている〝弘哲〟へと視線を移した。

 その〝弘哲〟が嗤った。顔に張り付いていた...

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