21。フェルト

背後にダンカン王の姿を認め、ヴァルキリーの顔から血の気が引いた。体はこわばり、喉はからからに乾ききっていた。

王の一瞥を受け、衛兵たちは即座に頭を下げてアリアナを解放し、視線を低いままに保った。

「あなた……」ヴァルキリーはそっと声をかけ、一歩近づこうとしたが、ダンカンの睨みつけるような視線が彼女をその場に凍りつかせた。

胃の腑に恐怖が渦巻く。ここへ来る前に化粧室に寄っていなかったら、もう少しで失禁してしまうところだっただろう。

それでも、彼女は説明を試みた。「陛下、この奴隷が――」

「余がお前に説明を求めたか?」ダンカンの鋭い声が彼女の言葉を遮り、ヴァルキリーはごくりと唾を飲み込ん...

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