第1章
「どこへ行っていた? 自分で罰を受けろ!」
私の夫、佐藤友明がVTuberの配信部屋で命令した。その声には、ファンたちを興奮させるいつもの厳しさが含まれている。
私は従順に、買ってきたばかりの野菜を置き、配信用のカメラの前まで歩いていくと、ゆっくりと膝をついた。
「申し訳ありません、友明くん。お買い物に十分ほど多くかかってしまいました」
コメント欄は即座に沸騰した。
【高学歴美女にDV男、しかも伝統的な結納金まで自分から差し出すなんて、今の若者はどうなってるんだ?】
【再生数のために、真冬に妻へ浴衣を着せて雪の中で茶道を演じさせるとか、人間の屑の中でも鬼畜の所業だろ】
【言うなよ。前に弁護士が彼女に連絡して離婚訴訟を手伝うって言ったのに、本人が断ったんだ。この男に心底惚れ込んでるんだよ】
佐藤友明が開設した配信チャンネルは、主に私が彼ら家族三人の世話をする日常を撮影し、私を辱めることでアクセス数を稼いでいた。
彼が立ち上がるのを許してくれた時、私は膝のファンデーションが擦れて落ち、青紫色の死斑が覗いているのに気づいた。
あら、生きている人間用のファンデーションは、やっぱり持ちが悪すぎるわね。
私は慌てて着物の裾でそれを隠した。
「長襦袢を着替えてまいりますわ。皆様に伝統的な和装をお見せしますね」
私は微笑みながらそう言うと、素早く立ち上がりカメラの範囲から離れた。
配信の投げ銭額が狂ったように跳ね上がり、視聴者はこの「伝統的な日本の夫婦関係」に熱狂していた。
スタイル抜群で容姿端麗な妻が、文句一つ言わず健気に尽くす。男性視聴者たちはこれに興奮を抑えきれず、どうすればそんなことができるのかと佐藤友明に質問を浴びせた。
佐藤友明は彼の「妻を御する術」を語り始めた。
「女を扱うにはな、甘やかさないことが肝心なんだ」
彼は得意げに言った。
「俺の妻は、俺の前では決して素顔を見せない。いつも俺が寝た後に化粧を落とし、起きる前に化粧を済ませる。夫の視覚的要求を満たすのは、妻の義務だからな」
その時、一本の特殊なコメントが佐藤友明の目に留まった。
【お前の妻は怨霊体だ。夜中に化粧をするのは死人だけ】
佐藤友明は腹を抱えて笑った。
「なんだこの戯言は?」
【彼女が化粧をするのは、午前二時から三時じゃないか? その時間は陰の気が最も強く、化粧のノリが一番良くなるからだ!】
佐藤友明の笑みが凍りついた。確かに彼は私の素顔を一度も見たことがない。そして毎朝目覚めると、私はいつも完璧な化粧を施してベッドの傍らに立っていた。
【結婚してもう三年になるだろう?】
【怨霊体の限界期間が近い。怨霊体は生気を吸う必要がある。彼女はいつもお前にまとわりついていないか? 睦み合った後、お前は熱を出したり風邪をひいたりしていないか?】
佐藤友明は結婚後の身体の変化を思い返した。原因不明の発熱、わけのわからない疲労感、そして私の肌に対する異常なまでの執着。
【怨霊に涙はない。お前は彼女が泣くのを見たことがあるか?】
佐藤友明は今度こそ完全に固まった。
この三年間、彼がどれほど罵倒し、辱めても、私は一滴の涙も流したことがなかった。
【私は陰陽師だ。もし私を信じるなら、今夜、彼女の化粧落としに神社の御幣の粉末を混ぜてみろ。怨霊体が使えば、顔は腐り落ちる。人間か怨霊か、試せばすぐにわかる】
佐藤友明は半信半疑だったが、この誓いを試してみることにした。陰陽師の言葉を信じたわけではなく、配信の視聴者数がぐんぐん伸びていたからだ。
彼はカメラに向かって宣言した。
「視聴者の皆さん、この後、特別配信を行います」
