第十三章

緊張で体がこわばっていたせいで、急いで紙に書きつけた文字が少し滲んでしまった。

『あの男は私をレイプして殺そうとしています。助けてください!』

王子の隣に立つ吸血鬼のエンフォーサーと目を合わせないようにしながら、私はそれを彼に手渡した。

部屋はきちんと空調が効いているというのに、彼から滴る汗の匂いがした。吸血鬼は冷気を必要とするため、宮殿が東ヨーロッパの中心に位置しているにもかかわらず、冷房は常につけられているのだ。

王子がメモを読むのを見守っていたが、そんな罪を犯そうとしたエンフォーサーに怒るどころか、彼が微笑むのを見て、私の心臓は激しく鼓動し始めた。

人殺しに過度な期待を...

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