第百九十二章

ルシアン視点

この一週間の幸福が、どうして、なぜこんな狂気に変わってしまったのか、俺には理解できなかった。

俺たちの種族を守護する女神様に祈ったことなど一度もなかったが、俺たちが彼女を追いやってしまった危険から最愛の人を救い出す道中、手遅れでないことを願い、祈り続けていた。

彼女は人生でさんざん苦しんできた。もし俺たちが早くたどり着けなければ、ヴラドとマーティンが彼女に何をするか、想像もつかなかった。

電話をかけ続けるのにも疲れ果て、心ここにあらずで車窓から流れる田園風景を眺めていた。その景色を味わう余裕など全くない。そんな時、もう何度目か分からない着信音が鳴り響いた。

無視した。

...

ログインして続きを読む