第二十一章

誰かがキッチンに入ってきたのがわかって、息を止めた。一目見て誰もいないと思えば、そのまま立ち去ってくれるかもしれない。

そのとき、キッチンアイランドにお皿を置きっぱなしにしてきたことを思い出し、自分の頭を殴りつけたくなった。

影がはみ出して居場所がばれないように、目を閉じて、できるだけ体を小さくする。

「なあ、お前は本当に隠れるのが下手だな」ルシアン王子の声に、私はびくりと肩を震わせた。「階段のところから匂いがしていたぞ」王子はそう付け加え、こちらに歩いてくる。

もこもこの履物に包まれた彼の足が目に入り、それから顔を上げて王子を見上げた。

「ヴァイオレンス、なぜまたこんな時間にうろついている?...

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