第256章

エレノア視点

ポータルから出た瞬間、私の携帯が鳴り始めた。

ある現実から別の現実へ、ほんの二秒足らずで移動するというのは、奇妙な感覚だった。説明のつかない形でのタイムトラベル。ある瞬間には存在し、次の瞬間には消え、そして目を開けると、虚空から現れた私を目撃して怯えきった少女を、真正面から見つめていることになる。

「大丈夫よ」私はささやき、彼女の顔を腕で包み込む。「――何も、おかしなものは見ていない――」暗示に込めた力はごくわずかだ。相手がまだ幼い少女で、永続的なダメージを与えたくなかったから。

十年後には、もしかしたら思い出すかもしれない。

もしヴラドが全世界を消し去るのに成...

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