第三十九章

ルシアン視点

彼女を抱えて執務室へ運ぶ道すがら、宮殿が目覚めていく気配がした。ヴァイオレンスと俺が過ごしたこの六時間の出来事など露知らずに。

皆、目を覚まし、いつも通りの一日を始めるのだろう。俺が自らに課し、決して越えぬと誓った一線を越えてしまったことなど、知る由もなく。

彼女を永遠に失うかもしれないという考えが、どれほど俺を恐怖させたか。あの悍ましい生き物どもを吸血鬼に変え、何世紀も餌を与えずに地下牢に閉じ込めておきたいと、どれほど強く願ったか。奴らは彼女に触れ、その身を拘束し、同じ空気を吸い、そして彼女を心底怯えさせた。最後にそんな真似をした男は、今頃、俺の私的な地下牢で毎週...

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