第四十五章

私の中で何かがぷつりと切れるのを感じた。彼の、仲間ほど冷酷ではない一面に、私は惹きつけられていたのだ。私のために寝室から掛け布団を持ってきてくれた彼。権力を独り占めするのではなく、兄と共に王位に就く方法を見つけ出すために、毎晩私の血を抜いていた彼の一面に。

でも、そんな吸血鬼は存在しなかった。目の前の光景が、その何よりの証拠だった。

私は誘拐犯を美化してしまっていた。我ながら、救いようのない馬鹿さ加減だ。ジュリアン相手にだって、そんなことはしなかったのに。彼からは、何度も何度も逃げようとした。私たちの番いの絆を断ち切ろうと何度も試みたけれど、彼は決してそれを受け入れず、開いた傷口の痛みに何...

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