第八十章

ヴァイオレット視点

私がいま抱えている最大級のジレンマ。それは、人間と関わるうちに芽生えてしまった罪悪感だった。

他の人ならざる者たちと一緒だった頃は、人間が持っているものなら何でも奪うことができた。だって、人間に何ができるっていうの?

だからヴァンパイアは人間の血を飲み、人狼たちは億万長者やCEOとしていくつものビジネスに溶け込んでいた。他の下級種は目立たないように人間との接触を避けていたけれど、それでも、誰かが必死に手に入れたものを奪うのは悪いことじゃない、というのが共通認識だった。

でも私は、看護師として五年ほど人間たちと働き、彼らの人生や物語、経験にどっぷりと浸かってきた。だか...

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