第27章

洗面所で、篠は我に返った。

自分が悠の膝の上に座っていることに気づき、ついさっきまでの快感が、ぼんやりとした戸惑いに変わる。

いまの、まさか……。

なのに、どうしてこの獣は相変わらずスーツをきっちり着込んでいるのか。

服も乱れていない。事後めいた崩れ方など、どこにもない。

紙をびりびりと引き出す音が聞こえた瞬間、篠は悟った。

「手で?」

悠は個室のトイレットペーパーで自分の指先を拭っていた。

気のない声で、ああ、とだけ返す。

篠の胸の奥で、怒りが一気に燃え上がった。屈辱もいいところだった。

どれだけの男が、彼女の足元にひれ伏したがっていると思っているのか。どれだけの男が、...

ログインして続きを読む