第35章

不二家の大奥様は、絵に描いたような男尊女卑の人だった。かつて篠の実父が最初の妻と離婚しようとしたときも、頑として首を縦に振らなかった。不二家の血筋をここで絶やしたくない――ただ、それだけの理由で。

その後、奈央を後妻に迎え、篠が生まれた。すると大奥様は露骨に不機嫌になり、女なんて金食い虫だと罵った。

篠は頬を伝う水滴に触れた。

幸い、今日は化粧をしていない。日焼け止めを軽く塗っただけで出てきていた。

指先の水をぱっと払って、篠は口を開く。

「何があったの、おばあさま。そんなにお怒りになるなんて」

「おまえ……」

大奥様は、篠が真っ向から言い返してくるものと思っていたらしい。まさ...

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