第36章

「篠」

「氷室様――」

行広睦子と七海の声が、同時に響いた。

ガララ――ワンボックスのスライドドアが乱暴に開き、豚みたいに肥えた男が鉄パイプ片手に降りてくる。篠を指さして、ピッと口笛を吹いた。

「いいじゃん! おまえら二人に“ちょいと警告しとけ”って言われてさ。これで俺の仕事は完了だ」

「チッ……篠ってマジで美人だな。あいつが言ってたぜ。おまえが奴の下に潜って泣きつきゃ、この件はチャラになるってよ」

「氷室弁護士がどんだけ有能でも、所詮は新参だ。帝都はまだおまえの天下じゃねえ。誰を敵に回しちゃいけねえか――そこ、ちゃんと考えとけ」

悠が篠の腰を支え、まっすぐ立たせる。口元だけを...

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