第59章

「何を見てるの?」

「篠って知ってる?」

 黒崎亜美は彼に少し話があって部屋を訪ねたが、ノックしても返事がない。そこで扉を開けて中に入り、洗面所のほうで人影が動くのを見て、のぞき込むように一歩踏み込んだ。

 すると、彼の指先がスマホ画面に表示された名前の上でぴたりと止まっている。

 どうやってあの女を自分のところへ引き寄せるか、そんなことでも考えていそうな顔だった。

「一度だけ会ったことがある」

 黒崎亜美は少し考えてから口を開く。

「篠って子、帝都じゃあんまり評判はよくないわ。でも頭は切れるし、やり方も立ち回りも、そこらの名家のお嬢様とは比べものにならない。ただ、どこが特別か...

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