第8章

石原真奈美の視点

振り返ると、そこに赤いドレスを着た一人の女性が立っていた。

「綾乃」と悠斗が言った。私の腰に回された彼の手が、ぐっと力を込める。

「久しぶりね」彼女は微笑んでいたが、その目は氷のように冷たかった。視線が私へと移り、頭のてっぺんからつま先まで品定めするように見られる。「で、こちらはどなた?」

あら、そういう態度でくるわけ。いいでしょう。

「私の婚約者、石原真奈美だ」

綾乃の笑みが、より鋭くなる。「婚約者。ずいぶん……急な話ね」彼女はわざとらしい好奇心を浮かべて首を傾げた。「あなたのご両親も、さぞお喜びでしょうね。あなたにはずっと、相応しい人と落ち着いてほしが...

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