第1章
夫の株田航平と結婚して三年、私は二度妊娠した。
だが、どちらの子も守ることができなかった。
私の子を殺した犯人は、医学的なトラブルなどではない。一枚の絵だ。
航平の弟で、生まれつき目が見えない十歳の次人が描いた絵だ。
前回、私は妊娠八週目を迎えたばかりだった。皆は歓喜し、子のために絵を描いて祝おうと次人を呼んだ。
次人は私の下腹部にそっと手を当てた。
そして筆をとり、異様な黒い鳥を描き出した。
義父の史司と義母の華恵美は、次人は生まれついての霊媒であり、彼の絵は神の啓示だと言い張った。
黒い鳥は、奇形児を意味し、一族の災厄を意味するのだと。
その日、二人は問答無用で私を車に押し込み、消毒液の悪臭が漂う闇の個人クリニックへ引きずり込んだ。
私は恐怖に目を剥き、必死に後ずさりした。
「嫌! 行かない! 私の子は何もおかしくない!」
「どうして堕ろせと強要するの!」私は切実に答えを求めた。
だが、史司と華恵美は私をまともに見ようともしない。
私が動こうとしないのを見て、それまで厳格だった史司の顔が瞬時に歪み、猛然と身を乗り出して、容赦なく私の指をこじ開けた。
「百花、お前は我々株田家の嫁だ。従わねばならん!」
「霊視の啓示は絶対に間違いない! この黒い鳥は呪いの象徴であり、欠損の象徴だ! 堕ろせと言ったら堕ろすんだ!」
私の最初の子は、こうして一溜まりの血水と化した。
今回、私は賢く立ち回った。
この子を守るため、こっそりと日本トップクラスの私立病院へ通ったのだ。
大金をつぎ込み、最も網羅的で権威ある妊婦健診を受け、危険を冒して羊水検査まで行った。
検査結果は、胎児の発育が完璧で遺伝的欠陥が一切ないことを示しているだけでなく。
航平とのDNA一致率が九十九・九パーセントに達するという証明書まで添えられていた。
科学の裏付けがあれば、今度こそ私の勝ちだと思っていた。
権威ある印が押された分厚い検査報告書を束ねて手に持ち、私は迷信深い義父母の前に堂々と立った。
だが、思いもよらなかったことに、悲劇は再び繰り返されようとしていた。
次人が遊魂のようにふらふらと近づき、その青白い小さな手を、再び私の腹に当てた。
家族全員が息を呑む。
そして彼はキャンバスに、またしても黒い鳥を描いたのだ。
その瞬間、史司と華恵美の目の色が変わった。
彼らは私がローテーブルに叩きつけた報告書など見向きもしない。
即座に態度を翻し、ためらうことなく私の二番目の子に死刑を宣告した。
「報告書などいくらでも誤魔化せるが、次人の目は魂の深淵を見通すのだ!」
「これは欠陥だらけの怪物だ! 生かしておけば、一族に祟りが及ぶ!」
そのことを思い出すと、私の胸は激しく波打ち、鬱憤で狂いそうになる。
私が大金を払って手に入れた科学的証明が、彼らの目には、盲目の子供が適当に描いた黒い鳥の落書きにも劣るというのか。
声も嗄れよと問い詰める私に対し、史司と華恵美は答えることすら面倒だという態度だった。
彼らはただ一層乱暴に、私をソファから引きずり下ろそうとする。
だが、私と彼ら二人とでは力の差がありすぎた。
結局、私は力ずくで床に引きずり倒された。
「離して! こんなの人殺しよ!」
私のハイヒールが片方吹き飛び、足首が床にぶつかって大きな痣ができた。
彼らはまるでゴミ袋でも引きずるように私の両腕を抱え、玄関の外へと引きずっていく。
その間も、次人はイーゼルの前で静かに座っていた。
虚ろな両目は何もない前方を見つめ、口元から不気味な呟きを漏らしている。
「黒い鳥、黒い鳥が厄災をもたらす……」
「黙って! この詐欺師!」私は血走った目で、もがきながら次人に向かって咆哮した。
「あなたがでたらめを言ってるだけじゃない!」
私が次人を罵るのを聞いて、華恵美は裏拳で私の背中を思いきり叩きつけた。
「百花、神を冒涜する気! 次人は神様が我が家にくださった贈り物なのよ!」
「今日この子は、お前が何と言おうと絶対に堕ろしてもらうからね!」
ドアが乱暴に開け放たれた。
彼らは私をエレベーターホールまで引きずっていく。
膝が粗い絨毯に擦れ、火のように痛む。
だが、そんな痛みなど、心の中の恐怖に比べれば何でもなかった。
私は本当に、また我が子を失ってしまうのだろうか。
駄目だ! 絶対に駄目!
私は必死に身をよじり、エレベーターのドアの外にあるゴミ箱の縁に死に物狂いでしがみついた。
「お願いです!」私は涙と汗を床に落としながら、必死に哀願し始めた。
「子に罪はありません! もう心拍もあるんです! あれはただの絵じゃないですか! 私の子の命を奪わないで!」
私が涙ながらに訴え、両膝をついて地の底まで卑屈になっても、史司と華恵美は全く動じなかった。
華恵美は冷笑し、その目には一欠片の温もりもなかった。
「百花、前回の教訓を忘れたの? 一度堕ろしたんだから、どうしてもう少し賢くならないの? この怪物は、絶対に産ませないわよ!」
史司が一歩前に出て、私がしがみついていたゴミ箱を蹴り飛ばした。
彼は私の顎を力任せに掴み、無理やり顔を上げさせた。
「大人しくクリニックへ来い。一族のために、お前の子は死なねばならんのだ」
息が詰まるほどの絶望に包まれたその瞬間、エレベーターから澄んだ音が鳴った。
エレベーターのドアが、私の目の前でゆっくりと開く。
中には、私の兄が立っていた。
その瞬間、私は希望の光を見た気がした。
