第4章

ラテを二つ持って星野芸能事務所の最終編集室へ向かう。表面上は落ち着きを装いながらも、胸中は激しくかき乱されていた。この三日間、涼真の書斎の壁に貼られていた写真が、頭から離れなかったのだ。

どうして私の写真を? これはいったい、どういう意味なんだろう?

直接尋ねようとするたびに、彼は会議中か、三階の専用フロアに姿を消してしまっていた。昨夜はわざと彼の前で「プライバシーの問題」について口にしてみたのに、彼はただ「心に留めておく」とだけ言って、すぐに話題を変えてしまった。

でも、認めざるを得なかった。この複雑な関係が、私の中で奇妙な感情をかき立てていることを。月給7,500万円と豪邸での暮らしだけじゃない。でも……涼真が時折見せる、気遣い。私が甘すぎるコーヒーが苦手なことを覚えていてくれたり、私が深夜まで残業していると、夜食にケータリングを頼んでくれたり。

これがただのビジネス契約だとしたら、どうして彼はこんなに細やかな気遣いを見せるのだろう?

「少なくとも、今は彼を近くで観察するチャンスがある」手の中の香り高いラテに、私はそう呟いた。

コーヒーを届けるのを口実に涼真を観察して、何か答えを見つけ出そうと決めた。

編集室のガラス扉を押し開けながら、「コーヒーを差し入れる、かいがいしい彼女」という完璧な役を演じる準備をした。その裏で、彼の微細な表情の一つ一つを分析するつもりで。

しかし、目の前の光景に私は凍りついた。

涼真が編集卓に身を乗り出し、『危険なゲーム』の主演女優である赤井薫と、驚くほど近い距離で立っていたのだ。二人は真剣な面持ちでスクリーンを見つめている。そのプロフェッショナルな親密さに、私の心臓が激しく跳ねた。

「このシーンの感情の深みは、もっと掘り下げられる」涼真の声は低く、人を惹きつける響きがあった。「君の脆さが、まだ生々しくないんだ」

薫は自分の金色の髪を指で梳きながら、妖艶な瞳で言った。「分かります、涼真さん。もっと……内面をさらけ出す勇気が、私には必要なんですね」

私はコーヒーカップを強く握りしめ、指の関節が白くなった。彼が彼女を見る眼差しは、あまりに真剣で……私には一度も見せたことのないものだった。

「コーヒー、お持ちしました!」私はわざと声を張り上げた。甲高いとさえ思えるほど明るい声で。

涼真は顔を上げ、その表情は瞬時にプロとしての距離感を取り戻していた。「ありがとう、絵梨。テーブルに置いておいてくれ」

薫は振り返り、雑誌の表紙のような完璧な笑みを浮かべた。「絵梨さん、気が利くのですね。どうりで涼真さんが……あなたに『依存』しているわけです」

彼女は「依存」という言葉に、わざと含みを持たせた。胸が焼けるように熱くなるのを感じた。

「当然のことをしているだけです」私は平静を保つのに必死だった。「なんといっても、これが私の……『仕事』ですから」

涼真は私の声の微妙な変化に鋭く気づいたようだったが、薫はすでにスクリーンに視線を戻していた。「涼真さん、第三幕のクライマックスシーンについて、少し二人きりで話したいことがあるんですけれど」

涼真が頷くのを見て、私の心は張り裂けそうだった。私は編集室を飛び出し、廊下で大きく深呼吸をして、荒れ狂う感情を鎮めようと努めた。

これはただの仕事の打ち合わせよ、絵梨。あなたは雇われた女優。自分の立場を忘れないで。

それから一時間、私は無理やり仕事に集中した。書類を整理し、メールに返信し……気を紛らわせるものなら何でもよかった。

メインの会議室を通りかかったとき、陽気な男性の声が聞こえるまでは。

「薫さん! ついに伝説の氷の女王に直接お会いできるとは」

ガラス張りの壁の向こうで、非の打ちどころのないスーツを着た金髪のハンサムな男性が、輝くような笑顔で薫に近づいていくのが見えた。

「あなたが涼真さんのプロデュース・パートナーの、丸山大輔さん?」薫の声は氷のように冷たかった。「噂はかねがね」

大輔は明らかに彼女の美しさに度肝を抜かれていた。「一緒に食事でもいかがです? ちょうど今夜のレストランを予約したばかりなんです」

薫は彼の目をまっすぐに見つめ、その声は残酷なほど率直だった。「そんな感情に賭けて、キャリア的に得られるものって何?」

大輔は呆然とした。「は?」

「感情移入に対する投資利益率よ」薫はスーツを整えた。「私は負ける取引はしないの、大輔さん。あなたは何を提供できるの?」

大輔の笑顔が凍りついた。「私は……友人から始められたらと……」

「友人?」薫は軽く笑った。「私の友人は、銀幕の栄光賞を受賞した監督か、億単位の投資ができるプロデューサーだけよ。あなたはどちらのカテゴリーに入るのかしら?」

私はドアの外から、呆気に取られてその様子を見ていた。さっきまで涼真と穏やかに脚本の話をしていた女性と、同一人物だなんて信じられない。

大輔の顔が真っ赤になったが、すぐにビジネスマンとしての抜け目のなさを取り戻した。「なるほど。薫さんは現実主義者なんですね。では、直接ビジネスの話をしましょうか?」

「話が早いわ」薫は満足げに頷いた。「私のキャリアにおいて、男はみんな踏み台よ、大輔さん。涼真さんも、この業界の誰もかもね」

血の気が引いた。彼女は誰に対しても、涼真に対しても、本物の感情など抱いていなかったのだ。

その夜、私は海辺の豪邸にあるホームシアターで丸くなっていた。大画面には『高慢と偏見』が映し出されていたが、私の意識はまったく映画に向いていなかった。

私の隣の肘掛けには、涼真のiPadが置かれ、画面はまだ光を放っていた。

ちらりとそれに目をやり、心臓が止まった。

画面いっぱいに映し出されていたのは、薫の撮影スチルや日々のラッシュ映像、演技メモ、さらには彼女の人物分析に至るまでだった。フォルダには、はっきりと「赤井薫――人物研究」とラベルが貼られていた。

彼は本当に……彼女の細部まで研究していたのだ。

手が震えるのを抑えながら画面をスクロールすると、さらに多くのコンテンツが見つかった。薫のオーディション映像、演技分析、果ては彼女のインスタグラムの投稿のスクリーンショットまで。

「また感情シーンの練習かい?」

背後から涼真の声がして、私は驚きのあまりiPadを放り投げそうになった。

「はい……」私は急いで画面をロックした。涙で視界がぼやける。「メソッド演技は、とても大変で……」

涼真は歩み寄ってきて、紳士的な距離を保ちながら私の隣に座った。「ケータリングに何か癒されるものを届けさせようか?」

「いえ、大丈夫です」私は必死に声を抑えた。「ただ……失恋シーンの感情のリアリティを研究していただけなので」

涼真は一瞬黙った。「熱心だな」

熱心? 私はただ、演技指導までサービスに含まれる高級エスコートに過ぎないのに。

私は立ち上がった。「疲れましたので、部屋に戻ります」

「絵梨」涼真が私を呼び止めた。「明日、大輔が君に頼みたいことがあるそうだ」

私は振り返り、平静を装った。「何のご用件でしょう?」

「薫のことだ」涼真の表情は複雑だった。「君たち、話をしたそうだな。アドバイスを求めたいと」

私の心は粉々に砕け散った。涼真が、大輔が薫を口説くのを手伝えと、そう言っている? これがどういう意味か、彼は分かっていないのだろうか?

待って……これは私を試している? それとも、どうせ大輔では薫を射止められないと分かっていて、わざと私に手伝わせようとしている?

さらに恐ろしい考えが浮かんだ。もしかしたら涼真は薫の本性を知っていて、私に大輔を手伝わせることで、ただ大輔に諦めさせて、自分への競争相手をなくしたいだけなのかもしれない。

「分かりました」私は無理に笑顔を作った。「大輔さんのお手伝いをします」

深夜、客室のキングサイズのベッドに横たわりながら、私はスマートフォンを手に取り、大輔にメッセージを送った。

「薫さんを口説くお手伝いをしたいんです……私、彼女の好みが分かります」

送信ボタンを押した瞬間、心が引き裂かれるのを感じた。

薫は大輔を傷つけるだろう……たとえ自分にチャンスがなくなるとしても、そんなことはさせられない。

すぐにスマートフォンが震え、大輔から返信があった。「どうして涼真のアシスタントディレクターが、私が別の女を追うのを手伝うんだ? 君の狙いは何だ?」

私はメッセージを見つめた。真実を話すことはできない。それでも、涼真を薫の冷酷な策略から守るために、この辛い計画を続けなければならなかった。

指がキーボードの上を彷徨い、思考が駆け巡る。

もし涼真が本当に薫を好きなら、彼女が大輔と一緒になるように仕向けた方がいいのではないか? 少なくとも大輔は善人で、彼女を本気で傷つけることはないだろう。そして涼真は……涼真は、利用される苦しみを味わわずに済む。

窓の外では、月明かりの下で海が煌めいていたが、私にはただ闇しか感じられなかった。

これが恋というものなのだろうか? 心が張り裂けそうになると分かっていても、それでもその人を傷つけたくないと願うこと。

ついに涙が溢れ出し、スマートフォンの画面に滴り落ちた。

どれくらい泣いたか分からない。ただ、湿った枕を抱きしめながら、ようやく眠りについたことだけを覚えている。

翌朝、真矢からの興奮した電話が、豪邸の静寂を破った。

「絵梨! すごいニュースがあるの!」真矢の声は興奮を隠しきれていなかった。「私、雅人さんと結婚することになったの!」

私はベッドから飛び起きそうになった。「えっ? そんなに急に?」

「あなたに完璧な結婚式を体験させてあげるためよ!」真矢はくすくす笑った。「昨日、計画の全部を話し合ったの。この結婚はお互いのキャリアに利益があるし、それにあなたも本物の社交界の結婚式がどんなものか体験できるでしょ!」

私は受話器を握りしめ、震える声で言った。「真矢……雅人さんのこと、愛してるの?」

電話の向こうが一瞬静かになり、それから真矢はそっと笑った。「愛なんて贅沢品よ、絵梨。私たちには相互の尊敬と共通の目標がある。それって、非現実的なロマンスよりずっと実用的だわ」

電話を切った後、私は果てしなく広がる海の景色を眺めながら、さらに胸が痛むのを感じた。

真矢でさえ、現実的な取り決めを選んだ。それなのに私はここで、叶わぬ恋に心を痛めている。

スマートフォンの画面に表示された、大輔からの返信されていない質問に目をやり、深呼吸をしてから、タイピングを始めた。

「私に狙いはありません、大輔さん。ただ……幸せになるべき人たちがいると思うんです。その幸せが実現するのを、手伝いたいだけです」

今度は、迷わずに送信ボタンを押した。

たとえそれが、私にとって唯一のチャンスを、自らの手で遠ざけることになったとしても。

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