第8章

涼真のオフィスのドアノブにかけた手は、きっかり三秒間、そのままだった。

昨夜のファーストキスと、あの優しい言葉のせいで一睡もできなかった。彼の腕の中にいるときはあんなに現実味があったのに、朝になる頃には、いつもの不安がそろりと頭をもたげてきていた。

本当に私のことを愛してくれてる? それとも、ただの一時の気の迷い?

「絵梨?」中から涼真の声がした。「入っていいよ」

ドアを押し開けた私は、目の前の光景に言葉を失った。

壁一面――床から天井まで――、何百枚もの私の写真で埋め尽くされていたのだ。以前に見たことのある数枚の隠し撮り写真だけじゃない。何百枚も。撮影現場でのあらゆる表...

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