第10章

あの一件以来、私はすっかりキャンパスの注目の的となっていた。

神崎菊司はスーツ姿で文学部の建物の下で待ち構え、池田悠は重厚なバイクにまたがって校門で私を待ち伏せ、西野智也はいつも図書館へ向かう途中で私と『偶然』出くわす。

京都大学の校門をくぐると、すぐさま四方八方から突き刺さる視線を感じた。女子学生たちは私を見るなり俯いてひそひそと囁き合い、男子学生たちはまるで私が何か伝染病でも持っているかのように、意図的に私と目を合わせようとしない。

最近では、一部の女子からLINEで個人的にメッセージが届くことさえあった。カフェで『恋愛講座』を開いて、どうすれば三人の学内の有名人を同時に夢...

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