第3章
三人が皆、針にかかったのを見届け、私の計画も次の段階に進むべき時が来た。
私はベッドの上であぐらをかき、指をLINEのトーク画面で素早く滑らせる。
明日は夏祭り。私が丹精込めて準備してきた舞台だ。
「明日の夏祭り、とても有名なんですって。もしご予定がなければ、一緒に行きませんか？ 新しく買った浴衣、着ていきますね……」
ワンタップで送信すると、私は満足げにスマホをおやすみモードに切り替え、ベッドサイドテーブルに置いた。
案の定、三つの通知音がほぼ同時に鳴り響く。私はベッドに横たわり、口の端に得意げな笑みを浮かべた。
翌朝目覚めると、夏祭りはもう始まってからしばらく経っていた。
入口にはすでに、浴衣姿の若者たちが大勢集まっている。
私がのろのろと到着すると、三つの見慣れた人影がすでに入口に立ち、それぞれ別の場所に散らばっていた。
彼らはまだ互いの存在に気づいていないようだ。
私は深呼吸を一つし、浴衣の襟元を整える。
わざと選んだ桜色の浴衣に、精巧な髪飾り。明るく、それでいてどこか悪戯っぽい雰囲気を醸し出しているはずだ。
そして、小股で入口へと歩みを進め、三人が皆見つけられる位置に立つことを意識した。
果たして、案の定。三人はほぼ同時に私の姿に気づいた。
神崎菊司の目に一瞬の賞賛がよぎり、池田悠の口角が微かに上がり、そして西野智也は優しい微笑みを浮かべているのが見えた。
しかし、その麗しい表情は、ほんの数秒しか続かなかった。
彼らの視線が私を通り越し、互いの存在を発見した時、空気はまるで一瞬にして凍りついたかのようだった。
最初に反応したのは池田悠だった。彼の表情は瞬く間に険しくなり、冷笑を一つ。
「なるほどな。みんな『特別なお誘い』とやらを受け取ってたわけか」
神崎菊司の反応はより抑制的で、彼はただ軽く袖口を直しただけだったが、その両目はひどく鋭くなっていた。
西野智也の顔から笑みが凍りつき、その目に一瞬、傷ついたような色が浮かぶ。
「先輩、僕はてっきり……」
だが彼はすぐに表情を整え、理解ある寛容な微笑みに切り替えた。
私は彼らに歩み寄り、驚いたふりをする。
「あら、みなさんいらしてたんですか？ 奇遇ですね……」
私は俯き、困惑と気まずさを装った。
三対の灼熱の視線が私に突き刺さるのを感じる。誰もが私の説明を待っていた。
「せっかくみなさんいらしたんですし、一緒に回るのもいいですよね？」
私は顔を上げ、無垢な笑みを浮かべてみせる。
三人の少年たちは顔を見合わせ、誰も先に立ち去ろうとはせず、奇妙な膠着状態が生まれた。
周りの観光客たちが、この不思議な四人組に気づき始める。学園の有名人だとわかった生徒たちの中には、こっそりと写真を撮り始める者さえいた。
「どうやら、私たちは人の噂の種になってしまったようですね」
私はそっと囁き、少し居心地が悪そうなふりをした。
池田悠が堪えきれなくなり、大股で歩み寄ると、ぐいっと私の手首を掴んだ。
「お前、ちょっとこっち来い」
神崎菊司がすぐさま後を追い、優雅に、しかし断固として私のもう片方の手を握る。
「池田、失礼が過ぎるぞ」
彼の声は冷静だったが、警告の色を帯びていた。
二人の間の雰囲気はますます張り詰め、次の瞬間にも殴り合いが始まりそうだった。
私は三人に囲まれ、手首に伝わる力を感じていた。
周りの人だかりは、この奇妙な光景に足を止め、スマホを取り出して録画を始める者まで現れた。
「やめて！」
私は突然叫んだ。声には明らかな怯えを滲ませて。
二人は同時にハッとしたが、どちらも手を離そうとはしない。私はその隙に声を張り上げた。
「みんなが見てる……お願いだから、やめて……」
私の目にはみるみる涙が浮かび始める。どうすれば一番効果的に涙を流せるか、事前に練習済みだ。
「うそ、神崎菊司と池田悠が、桜井葵を巡ってマジ喧嘩してる！」
「え？ ただの遊びだって聞いてたけど？ なんで手まで出してんの？」
「詳しいことはわかんないけど、私が見た時はもう取っ組み合いになってた。あの西野智也も止めようとして、巻き込まれちゃってたし！」
「動画撮った。学内掲示板に上げたから、すぐバズるでしょ！」
「うわ、桜井葵って何者？ 学園の有名人三人を同時に喧嘩させるなんて」
その時、夏祭りの花火が夜空に咲き始め、私に絶好の逃走機会を与えてくれた。
「ごめんなさい、私、今日は来るべきじゃなかったみたい……」
私は花火がもたらした喧騒と油断に乗じて、三人の拘束を勢いよく振りほどき、人混みの中へと駆け出した。
背後から三人の驚きと後悔の入り混じった呼び声が聞こえたが、私は振り返らず、祭りの雑踏の中へと素早く姿を消した。
数分後、私はすでに遠くの小高い丘の上に座り、一人で空の花火を眺めていた。
私はそっと呟く。遠くで咲き誇る絢爛な花火を見つめながら。
「本当に、馬鹿な人たち」
