第5章

葵視点

「葵」と、拓海が言った。「かっとなってるだけだ。本気で言ってるわけじゃないだろう」

「かっとなってなんかない」私は彼に向かって手を伸ばしたまま言った。「もう馬鹿な自分は終わりにしたいの」

お父さんが咳払いをした。「なあ、お前は辛い経験をしたばかりなんだ。大きな決断をするのは、少し待った方がいいんじゃないか」

拓海は、私たちが繋いだ手を見つめていた。「葵、陽介に腹を立てているからって、俺と結婚しようなんて決めちゃだめだ」

「そんな理由で言ってるんじゃない」私は彼の目をまっすぐに見つめた。「拓海、私と結婚してくれるの、してくれないの?」

彼は長い間、私の顔を窺うように...

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