第12章

江崎玲子は先ほど思わず嘘をついてしまい、婚約者がいると言ってしまった。そのことがきっかけで正社員になり昇進もできたのだ。

彼女は嘘がバレて古江直樹に解雇されるのを恐れ、意を決して嘘を続けるしかなかった。

しかし、気のせいか、彼女の言葉が終わった後、車内の空気がさらに冷たくなり、古江直樹の表情も明らかにおかしくなっていた。

また何か言い間違えたのだろうか?

最近の会社は入社したばかりで結婚したり、子供を産んだりする女性社員を好まないことを思い出し、江崎玲子は慌てて付け加えた。「古江社長、ご安心ください。わたし、30歳までは結婚する予定はありません。まずはキャリアを築きたいんです。古江社...

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