第121章

松本絵里は、慣れ親しんだ寮のベッドに横たわりながら、強烈な違和感を覚えていた。

ずっと、あの結婚は当時の状況からして仕方のない選択であり、佐藤悟に対して抱いていたのは、ただの感謝の気持ちだけだと思っていた。

少し距離を置いて、二人の関係をじっくり考え直そう——そう提案したときには気づかなかったのだ。いつの間にか、彼が自分の人生に深く浸透していたことに。いつからか、彼を愛してしまっていたことに。

だからこそ、彼の心に想い人がいると知ったとき、胸が張り裂けそうになった。初恋の相手が帰国したと聞いて、真っ先に逃げ出そうとしたのもそのためだ。「別れよう」——その二文字を突きつけられるのが、何よ...

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