第180章

「……」

佐藤安子は長いこと沈黙していた。あの過去を思い出したくないのは明らかだった。

「お義姉さん、もし……お辛いなら、もう話さなくて大丈夫です……私……私さえ分かっていれば、それで十分ですから」

松本絵里は気遣うように言った。

佐藤安子は手を振って答えた。

「構わないわ。悟の妻である以上、あなたには知っておくべき権利があるの。他人の口から聞かされるより、私が直接話した方がいい。後々変な誤解が生じて、悟との間に溝ができるのは避けたいから」

松本絵里が頷くと、佐藤安子は言葉を続けた。

「三年前、悟は宇宙の視察に同行したの。でも不運なことに大雪に見舞われて、車が横転し、二人ははぐ...

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