第67章

タクシーに乗り込んだ松本絵里は、恐る恐る後ろを振り返った。佐藤裕也がまだその場にしゃがみ込んでいるのを確認し、ようやく胸を撫で下ろす。

彼女は心に決めていた。ホテルに着き次第、すぐに荷物をまとめて宿を変える。もう二度と、佐藤裕也とは関わりたくない。

あまりにも恐ろしい出来事だった。まさか出張先で、上司に告白されるなんて。彼に対し微塵も恋愛感情がないのは言うまでもないが、問題はそこではない。もしこの件があの嫉妬深い夫・佐藤悟の耳に入ったらどうなるか。間違いなく佐藤裕也に掴みかかり、修羅場となるだろう。そうなれば、私の仕事だって続けられなくなる。

タクシーを降りると、ホテルの入口を行ったり...

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