第82章

「中村様、設計第二部の方から、書類への決裁を求められています」

中村哲也のデスクで電話が鳴った。秘書からの内線連絡だ。

「名前は?」

中村哲也は淡々とした口調で問い返す。

「松本絵里と名乗っています。ただ、入館証の名前は赤本純となっておりまして……本人のランクでは上がってこられないため、部署の他の社員のものを借りてきたそうです」

中村哲也は、自身の椅子を我が物顔で占領している男を、ニヤニヤと意味ありげな視線で見つめながら受話器に向かって言った。

「松本絵里ならば、すぐに通しなさい。今すぐサインしてやる」

その名前を聞いた瞬間、佐藤悟はバネ仕掛けのように椅子から飛び上がった。

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