第111章

佐々木陽奈の一件で、誰よりも快哉を叫んだのは松本綾乃だった。

彼女はわざわざ山下麻友を呼び出し、祝杯を挙げようとしたのだが――運悪く、店を出ようとしていた佐々木晶斗と佐々木陽奈に鉢合わせしてしまった。

陽奈は麻友の姿を認めるなり、まるで狂犬のように襲いかかってきた。

麻友はそれを軽くいなす。

勢い余った陽奈は自滅し、派手に転倒して顎を地面に打ち付けた。あまりの痛みに、その目には涙が滲んでいる。

「あははっ!」

綾乃が噴き出した。

「見てよ、私たちのお嬢様。なんて無様な格好なの?」

彼女はこういう時、他人の不幸を蜜の味とするタイプだ。

陽奈はよろよろと起き上がった。顎から血が...

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