第118章

「お母さん、そうカッカしないでくださいよ」

山口正樹は機嫌を取るようにへらへらと笑った。

「私は何もかも、山口家のことを思って言ってるんです。もし佐々木家と松本家が手を組んだら――」

「山口家の女の尊厳を犠牲にしなければ守れぬ家など」

大奥様は一言一句、噛み締めるように言い放った。

「ただの張りぼてだ。そんな廃棄物、要らぬ!」

リビングは死のような静寂に包まれた。

山下麻友は、呆然と大奥様を見つめていた。

山口家に嫁いでからの五年間、大奥様は一度だって、父の不始末を理由に麻友に当たり散らすことはなかった。彼女の鬱が最も酷かった時期、唯一そばに寄り添い、話し相手になってくれたの...

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