第122章

電話の向こうで、数秒の沈黙が流れた。

やがて彼が口を開く。

「基金の件だが、俺の一存ではどうにもならない」

山下麻友の心は、瞬時にして凍りついた。

「そうね」

彼女は激しく笑い出した。笑えば笑うほど、大粒の涙がとめどなく零れ落ちる。

「いつだって、あなたにはもっともらしい理由があるものね。山口洸人、あなたって本当に……立派だわ」

彼女は通話を切ると、スマホを床に叩きつけた。

ガシャーン。

画面の砕ける音が、ガランとした部屋に殊更鋭く響き渡る。

松本綾乃がドアを開けると、そこには床に蹲り、膝を抱えて震える山下麻友の姿があった。

肩は小刻みに揺れているが、嗚咽一つ漏らさない...

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