第128章

店内のドアベルが鳴り、新たな客が入ってくる。

話し声、エスプレッソマシンの蒸気が吹き出す音、そして遠くの通りを走る車の走行音が混じり合い、カフェのBGMとなっていた。

小川渚は、じっと山口洸人を見据えていた。長い沈黙の後、彼はようやく口を開く。

「理由は?」

「理由なんて必要か?」

小川渚は椅子の背もたれに体重を預け、リラックスした姿勢をとった。だが、その眼光は獲物を狙う鷹のように鋭い。

「五年前に終わるべきだった結婚だ。利己的で性悪な女と、これ以上続ける意味があるのか? 山口洸人、胸に手を当てて考えてみろ。この結婚に、互いを傷つけ合う以外の何が残っている?」

山口洸人の喉が引...

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