第137章

「きゃああっ!」

小林柚奈は半狂乱で悲鳴を上げ、後先も考えずに山下麻友に抱きついた。自分が盾になって、この一撃を受け止めようとしたのだ。

まさに絶体絶命の瞬間だった。

騒々しい音楽の中でも、その低く落ち着いた声は、異様なほど鮮明に響き渡った。

「お客様お二人に乱暴を働くのは、感心しませんね」

その場の全員が動きを止めた。

山下麻友が振り返ると、傍らに山口文也が立っていた。

仕立ての良いスーツに身を包んだその姿は、この雑然としたバーには似つかわしくない。照明が彼の顔に陰影を落とし、その瞳をいっそう深く、底知れぬものに見せていた。

「ふ、文也さん……?」

スキンヘッドの男は彼を...

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