第138章

トイレの個室。

山下麻友は鏡の前に立ち、洗面台に置いたスマートフォンを見つめていた。画面には、見知らぬ番号からの不在着信が三件、不気味に並んでいる。

車内でも無視し続けたが、戻ってきてからも着信は止まない。

それでも、山下麻友は出なかった。

誰なのか確証はない。だが、もし本当にあの人だとしたら……。

山下麻友は目を閉じ、冷たい水滴が顔を滑り落ちるのをそのままにした。無理やりにでも冷静さを取り戻そうとしたその時、再び電子音が鳴り響いた。

まるで命を削り取るような着信音に、彼女は無意識に身震いした。

恐る恐る視線を落とすと、画面には「山口文也」の名前が表示されていた。

「……山下...

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