第146章

レストランの席で、橋本美波は山口洸人と向かい合っていたが、彼が上の空であることになどとっくに気づいていた。

おいおい、と彼女は心の中で毒づく。彼女が話しかけても、その反応がワンテンポ遅れるのだ。

こんなことは、本来の彼にはあり得ないことだった。

山口洸人という男は優秀だ。マルチタスクなど造作もなくこなし、どんな作業をしていても他人の声や存在を蔑ろにすることなど決してないはずなのに。

橋本美波はチラリとスマホに視線を落とした。

山下麻友にしか見えないように設定したSNSの投稿に、『いいね』がついている。

彼女は一瞬、困惑した。

山下麻友が……怒っていない?

以前なら、こういう投...

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