第173章

車が病院の前に停まると、山下麻友は自分の上着を脱いで小林柚奈の肩にかけ、彼女を庇うようにして院内へと導いた。

山口洸人は無言のまま後ろについてきていたが、麻友が入院手続きと支払いを済ませようとした時だけ、その行く手を遮った。

「石川太陽がすでに手続きに向かっている」

麻友は彼を冷ややかに一瞥すると、腕を組み、診察室の前で静かに待った。

柚奈の体にはいくつか擦り傷があったが、それは些細なことだった。麻友が最も危惧していたのは、彼女の体に回復不可能なほどの深い傷が刻まれていないかということだ。

あんな獣の巣窟に何日も閉じ込められていたのだ。柚奈は目鼻立ちも整っており、若く生命力に溢れて...

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