第19章

山口洸人は、山下麻友というこの愚か者を、本当に表面上見えるほど気にかけていないのだろうか?

阿部雄輝は頭をがりがりとかきむしりながら、山口洸人が橋本美波に対して見せてきた数々の献身的な振る舞いを思い返した。そう考えると、やはり山下麻友の言い分の方が理にかなっているような気がしてくる。

山下麻友もまた視線を戻し、運転に集中し始めた。

彼女はずっと前から、何度も何度も確認してきたのだ。山口洸人の世界において、彼が全力を懸けて守るべき相手は橋本美波だけだと。

そして自分は、無価値な存在なのだと。

車は阿部グループの威容を誇るオフィスビルの前に滑り込み、停車した。

山下麻友と阿部雄輝は前...

ログインして続きを読む