第32章

「パチン!」

ドライヤーのスイッチが乱暴に切られ、洗面台に投げ出された。

山口洸人は山下麻友の肩を掴んで強引に振り向かせ、自分と向き合わせた。

「山下麻友! お前には心ってものがないのか!?」

「好きに思えばいいわ」

彼女は淡々と言い放った。

その言葉は、まるで頭から氷水を浴びせられたかのように、山口洸人の瞳に残っていた最後の怒りの火種さえも消し去った。

彼は数秒間、彼女を睨みつけると、ドアを叩きつけるようにして出て行った。

「バンッ!」

凄まじい音に、山下麻友の体がわずかに震える。

彼女は力が抜けたようにその場へ崩れ落ち、膝に顔を埋めた。

深夜、松風マンションは死のよ...

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