第45章

どれくらいの時間が経っただろうか。山下麻友の睫毛が微かに震え、意識がゆっくりと浮上した。

身近に人の気配を感じる。そして、あの馴染み深い、冷ややかな香りも。

彼女はすぐには目を開けなかった。彼と顔を合わせたくなかったし、どう向き合えばいいのかもわからなかったからだ。

その時、山口洸人の携帯電話が鳴った。彼はディスプレイに表示された名前を一瞥する。橋本美波だ。

彼は一瞬躊躇い、ベッドの上でまだ深く眠っているように見える山下麻友に視線を投げたが、結局は立ち上がり、窓辺へと歩いて通話ボタンを押した。

「洸人? そっち片付いた? 和田社長がどうしても君に会いたいって。またとないチャンスよ…...

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