第61章

結局、山下麻友は折れるしかなかった。他でもない、松本綾乃に平穏な日々を取り戻させるためだ。

権力という巨大な車輪に、勝ち目はない。その道理は彼女もわきまえている。

去り際、松本凛は笑みを浮かべて言った。

「お義姉さんのご配慮に感謝しますよ。おかげで事なきを得ました。日を改めて、僕が席を設けますので、洸人と一緒にお食事でも」

山口洸人は彼を一瞥し、冷たく言い放つ。

「さっさと失せろ」

松本凛は声を上げて笑いながら去っていった。

だがドアを出た瞬間、その顔から笑みは消え失せていた。

「佐々木陽奈。今回の件で、僕が洸人にどれだけの貸しを作ったか、分かっているね?」

佐々木陽奈の顔...

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